オタ福の相談部屋

あなたの主治医はどう言いましたか?

去勢が膿皮症の増悪因子になりうるか?

【質問内容】

もうすぐ9歳のミニチュア・ピンシャーです。

元々、皮膚が弱い子です。

去勢してから夏に膿皮症になり酷くなっている気がします。

ホルモンバランスも考えられますか?年齢もあるかもですが…

 

 

【回答】

まず、『膿皮症』とはどのような病気かという話からさせてもらいます。

膿皮症とは皮膚の表面にいる常在細菌のバランスが崩れてしまい、ある細菌(ブドウ球菌:Staphylococcus pseudintermedius)が皮膚や毛穴に感染して発症する皮膚病です。

 

膿皮症になりやすい原因

アトピー性皮膚炎←皮膚バリアが崩壊するため

ホルモン分泌の異常←今回のキーワード

過剰な皮膚の洗浄←細菌バランスが崩れるため

掻きすぎ、舐めすぎ←皮膚バリアの崩壊や皮膚が湿るため

皮膚の汚れ←細菌が過剰に増殖するため

などなど、様々な原因があります。

 

膿皮症になりやすい原因となるホルモン分泌の異常についてですが、

ここでのホルモン分泌の異常とはステロイドホルモンが過剰に出ることによる異常です。

 

主なステロイドホルモン

・性ホルモン(黄体ホルモン、エストロジェン、アンドロジェン

・グルココルチコイド

・ミネラルコルチコイド

があります。

 

ステロイドホルモンには免疫力を抑える働きがあります。

抗炎症剤として使われるのはこの理由です。

そして、膿皮症に感染しやすくなる理由は

ステロイドホルモンが過剰にでる→免疫力が低下する→ブドウ球菌に感染しやすくなる』

といった具合です。

 

では『去勢手術』によるホルモン変化を見てみましょう。

精巣の間質細胞で作られているホルモンはアンドロジェンと言われるホルモンで、後のテストステロン(男性ホルモン)です。

アンドロジェンは主に精巣の間質細胞と副腎皮質の網状帯という場所から産生・分泌されています。

去勢手術は精巣を摘出する手術であり、去勢手術後の動物では血中アンドロジェン濃度は著しく低下します。

今回のテーマである

『去勢が膿皮症の増悪因子になりうるか?』についてですが、

生理学的な現象に言い換えると、

『アンドロジェンの低下が表皮の細菌感染リスクを上がるか?』

という意味になります。

結論まで長くなりましたが、この2つの相関関係はないと言えるでしょう。

 

【オタ福の見解】ではなぜ膿皮症が悪化したのか?

ではなぜ、膿皮症が悪化したのかについて話していきたいと思います。

僕が考える膿皮症が悪化した原因

①湿気が多く蒸れやすいから

夏は気温が高く、湿度も上がるため毛で覆われた動物の体表は蒸れやすい。

蒸れやすいと細菌も増殖しやすくなるためだと考えています。

 

②細菌が抗菌薬の耐性を獲得したから

もし仮に抗菌薬を処方され、外用していて、なお悪化している場合は耐性菌の存在も疑わなければなりません。

耐性菌とは抗菌薬に対し耐性を獲得して、その抗菌薬が効かなくなる菌のことである。実は『膿皮症の多剤耐性菌の出現』は世界レベルで問題になっています。

この多剤耐性菌について話し始めると、かなりの量になってしまうため割愛させてください。ただ、膿皮症には薬が効かない可能性があることは知っておいてください。

薬が効くかどうかを確かめるには薬剤感受性テストというものを行わなければなりません。

 

【ちなみに】去勢でリスクを下げられる病気

さまざまな疾患のリスクを低下させるという意味で去勢は大切です。

①攻撃性などの問題行動

これは病気とは少し異なりますが、去勢を行わない場合は去勢した場合に比較して凶暴性が高いと言われています。これもテストステロンの元になるアンドロジェンの量が原因です。

 

②会陰ヘルニア

会陰部(お尻周り)の筋肉が弱まり、腸や膀胱などが皮下に出てきてしまう病気です。

これも男性ホルモンの関与が示唆されている疾患の1つです。

去勢を行うことである程度リスクを下げられます。

 

前立腺肥大

人でも有名な病気ですが、前立腺は性ホルモンの影響を受けて肥大します。肥大した前立腺尿道を圧迫し、排尿障害を誘発させます。

去勢により、性ホルモンの影響を少なくすることでリスクが低下します。

 

【オタ福の相談部屋とは】

オタ福の相談部屋とは、かかりつけの獣医師に聞けない些細な疑問や診断が不安なときに、相談する場所です。

誤解の無いように断言します。

僕は獣医師ではありません。獣医学生です。

本当にかかりつけ医の判断が正しいか、第三者の視点から意見を言います。

飼い主さんががかかりつけ医に、治療法を相談するためのアドバイスができればと思います。

診療行為を行うのは主治医であることに留意のほど、お願い致します。