【目次】
【基本情報】
動物種:犬
品種:フレンチ・ブルドッグ
年齢:12歳
【相談内容】
フレンチブルドッグの12歳という年齢から考えると、
最後までステロイドは服用続けるかもしれない。
免疫抑制剤とステロイドの違いがよくわからない。
他に私にできることはないか?
などと、悩むことがあります。
病状や治療、今後起こりえることなどあればアドバイス頂ければありがたく思います。
【臨床経過】
2018/6月頃
下痢をするようになり、低脂肪食を給餌。
食欲はあり、血便の見られない泥状便であった
下痢も長期間継続するわけではなかったので、経過観察することにした。
11月中ば
フード(ヒルズの消化ケアi/d ローファット)を食べなくなり、春から比べると体重は1kg近く減少しました。
元々嘔吐はする子でしたが、食後に嘔吐していることもありました。一時よくなっていた便も泥状から水様便になってきた。
主治医から
主治医からは色々な病気は考えられるが、蛋白漏出性腸症が一番考えられるからと説明され、11/17からステロイド服用を開始。
ステロイドを服用してからは食欲は増して、軟便程度には回復しているため、
今後はステロイドは便の状態で増減することになる
とのこと
血液検査の結果
アルブミン値:2,4(8/30)→2,9(11/7) ※≦2.5で低アルブミン血症
肝臓や膵臓の数値に異常はなく、貧血もない。
【回答】
今回の場合、僕も同じくIBDあるいは蛋白漏出性腸症の可能性があると思います。
治療的診断ではあるものの、一度ステロイドを投与し、便の状態が安定するかを見るのはIBD(炎症性腸疾患)の診断方法の1つでもあるからです。
蛋白漏出性腸症はIBDに続発して起こることもあります。
IBDとはまだはっきりとは解明されていませんが、おそらく自分の免疫細胞が腸で過剰に反応し、腸炎を引き起こす疾患とされています。
詳しくは『オタ福の語り部屋』へ
『僕がIBDからの蛋白漏出性腸症を疑った理由』
まずはIBD以外で下痢した時に疑う原因を並べてみましょう!
下痢で考えられる原因は
・感染症:寄生虫、細菌、ウイルス
・食事反応性腸症:ある特定の食物に反応する
・抗菌薬反応性腸症:抗菌薬に反応する
・腫瘍:腸管型リンパ腫、腺癌、GIST
・腸重積:下部の腸が内反し、上部の腸に入り込む
・腸以外の疾患:膵炎
このうちステロイドを投与して、状態が快方に向かう疾患は
・IBD
・リンパ腫
・膵炎
かなと思います。
膵炎に関しても『オタ福の語り部屋』で記事を書いているので、参考にしてみてください。
今回の場合、膵炎はまずないかなと思います。
なぜなら、こんなに長い経過を示しません。
膵炎はかなり痛いので、急激に体調を崩します。
よって、考えにくいかなと思います。
次にリンパ腫は考えにくいけど、除外もしきれない
今与えられている情報で除去することは困難です。
また、年齢も高齢なので腫瘍のリスクは自ずと上がります。
ただ、腹部の超音波検査で大体わかると思うので、主治医の先生も除去されていると思います。
治療的診断かつ除去診断による導き方ですが、本来IBDはそういった診断方法が主流であるため、いいでしょう。全身麻酔下で内視鏡生検をしてもいいですが(笑)
これらを踏まえて、IBDまたは蛋白漏出性腸症と考えます。
『ステロイド療法で気をつけること』
今後起こり得ることはステロイドの副作用です。
おそらくステロイド治療を開始する前に主治医の先生からご説明をされたと思いますが、医原性クッシングと呼ばれる病気があります。
ステロイドを投与しすぎることで、クッシング症候群という病気を発症してしまうのです。
こちらも詳しくは『オタ福の語り部屋』で書いているので、参考にしてみてください。
『飼い主さんができること』
おそらく、これが本題になるかと思いますが、飼い主さんができることは副作用が出ないかをよく観察してあげることです。
ステロイド薬の調整は獣医が行います。
獣医は病院での様子しか知りません。
獣医はステロイドをコントロールする時、主作用と副作用のバランスを考えています。
ステロイド剤の調整に必要な判断材料
・家での様子:薬が効いているか、副作用が出てないか
・血液検査:クッシングや免疫抑制による感染症を疑う所見はないか
・腹部エコー:副腎(ステロイドを出す臓器)が萎縮していないか
・X線検査:肝腫大など、ステロイドの副作用が出てないか
家での様子はとても重要なのです。
飼い主さんが見るべきポイント
・便の状態
・元気があるか
・発熱はないか
・多飲多尿が出てないか
・体を痒がっていないか
・お腹がたるんでいないか
・体毛が薄くなっていないか
などなど確認してもらえればいいと思います。
『ステロイドと免疫抑制剤の違い』
免疫抑制剤とは文字通り免疫を抑制する薬のことです。
そのため免疫抑制剤の中にステロイドは含まれます。
ステロイドと他の免疫抑制剤は何が違うのか?
それは
作用機序、値段、効果が違います。
減量できるといえど、完全に断ち切ることは難しく、一生飲み続ける可能性があるので、値段や副作用はとても重要なファクターになると思います。
免疫抑制剤の種類
・ステロイド(プレドニゾロン)
・アザチオプリン
・シクロスポリン
・クロラムブシル:抗がん剤の一種
・ミコフェノール酸モフェチル:副作用に消化器症状があるので使わない
まだまだ他にもありますが、大体これらがよく使われています。
ステロイド
作用機序:リンパ球(免疫細胞)全体を減らす
値段:安い
効果:早い、よく効く
デメリット:副作用が心配、耐性が付いてくるの効果が下がる
アザチオプリン
作用機序:代謝拮抗阻害
値段:安くはない、高くもない
効果:効く。けど、副作用と時間が…
デメリット:効果出るまで3週間かかる、骨髄抑制の恐れ、肝酵素上げる
シクロスポリン
作用機序:カルシニューリン阻害剤。T細胞を選択的に抑制
値段:高い。ステロイドと8倍くらい違うかった気がする
効果:よく効く。耐性が付きにくい。最近主流になってる
デメリット:ほぼなし。
図で簡単にまとめていますので、ご参考にどうぞ!
【最後に】
ざっと説明してみました。
今回はまず診断が正しいのか僕なりの見解を述べました。
そして、今後起こり得ることや飼い主さんが注意すべきこと、免疫抑制剤の違いについて言及してみました。
うまく説明できたかわかりませんが、他に何か気になる点等ございましたら、またコメントやツイッターのDMで受け付けています。
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