【目次】
- 【本症例の情報】
- 【ご質問内容】
- 【回答①~IBDの除去診断~】
- 【回答②~IBDの除去診断を終えてからやること~】
- 【回答③~本症例についてオタ福の考えは~】
- 【回答④~得意科目の先生に診てもらうメリット~】
- 【病気の徹底解説は『オタ福の語り部屋』まで】
- 【病気の個別相談は『オタ福の質問箱』まで】
【本症例の情報】
『主な症状は何ですか?』
嘔吐がよく見られます。
『主治医から言われたことは何ですか?』
病理診断にて『IBDを疑う』という結果を得ました。
↓
獣医師によりベルキュアバウというサプリが処方され、“週2回以上吐くなら連絡するように”と告げられました。
現在は週1回ペースの嘔吐なので、ホームメイド食を与え、様子見しています。
サプリは飲み続けても吐くため、現在は飲んだり飲まなかったり…
↓
以前、『他に原因はないんですか?IBDは決定なんですか?』と獣医師に尋ねると、
『IBDを視野に入れて治療していきましょう』と言われたものの、
除去診断等はしてくれず胃粘膜保護剤の処方のみで毎日これでいいのかと悩んでいます。
『行われた除去診断は何ですか?』
除去診断ですが、
糞便も食物不耐症も行っていません。
加水分解の低分子プロテインを食べていた際も嘔吐はありました。
血液検査は5~6項目ぐらいのものを4月に1度行ったのですが、蛋白質が流れていないかなどIBDの進行具合を確認するために~とかだったような気がします。
膵炎の可能性が~という説明は受けていません。
【ご質問内容】
以上のような状況が続いています。
再度除去診断をして貰えるようお願いした方がいいのでしょうか?
もしくは別の消化器科を探すべきなのでしょうか?
消化器疾患を得意とする先生に診てもらうべきなのでしょうか?
【回答①~IBDの除去診断~】
まず、IBDだと診断するためには必ず除去診断が必要です。
除去診断無しにIBDということはほぼ不可能です。
『IBDの除去診断とは』
IBDの除去診断は糞便検査、レントゲン検査、腹部エコー、食物不耐症の除去、血液検査などが比較的簡単にできる検査方法です。
IBDの除去診断
・糞便検査:寄生虫や細菌感染を除去
・レントゲン:食道や胃の異物や閉塞を除去
・腹部エコー:小腸や大腸の異物/閉塞/腫瘍、胆管炎などを除去
・食物不耐症:人でよく見かける牛乳飲んでお腹壊す人。犬でも特定の食事でお腹を壊す子がいて、その食材を除去していくことで判断します。
・血液検査:膵特異的リパーゼを検査し、膵炎の可能性を考える
などができます。
これらの除去診断をしっかり行なって初めて、侵襲度が高い病理検査を行うのです。
【回答②~IBDの除去診断を終えてからやること~】
上述の除去診断を経て、下痢で考えられる他疾患を全て除去しきった後に
「原因が分からない」→ステロイドで様子を見てみよう
となります。
IBDの場合、自己免疫が関与して、自分の免疫反応で自分の腸粘膜を攻撃している状態なので、
免疫抑制剤を投与するとある程度症状が治まるはずです。
ここまでして一向に回復が見られない場合は『全身麻酔下での内視鏡検査』で原因の精査を行うもの1つの治療戦略となります。
IBDの場合は免疫抑制剤を使用しないと治らないと思います。
粘膜保護剤では多少効果があるかもしれませんが、原因そのもの(免疫反応によって自分の腸粘膜を破壊すること)自体を治療できていないので、治療効果は乏しいものだと考えられます。
【回答③~本症例についてオタ福の考えは~】
別の病院でも意見を伺うのがいいでしょう。
IBDは十二指腸など上部消化管で発生した際、嘔吐が見られる場合があります。
しかし、IBDの主となる症状は『下痢』です。
今回のケースでは、獣医師が病理診断結果に引っ張られてかIBDだと思い込んでしまっている可能性があります。
そして、いくつかの疑問があります。
疑問①
なぜ、きちんと除去診断を行わずにIBDだろうと判断したのか?
疑問②
侵襲度の高い病理検査を行うには早い(十分検査しきれていないということ)
疑問③
IBDを視野に入れて治療していくと言うのに、なぜその治療法が粘膜保護剤なのか?←IBDは免疫抑制剤を用いて治します。
などなど、不思議な点が何個かあります。
ただ、
忘れないで欲しいのは僕が実際に身体検査や症状、検査結果を見たわけではない
です。
つまり、
実際に診察された獣医師の方が正しいという可能性も十分あり得ます。
これらを踏まえて、僕はセカンドオピニオンを行うべきだと考えています。
他の先生の意見に傾聴することで、新たな視点からアプローチして頂ける可能性があるからです。
【回答④~得意科目の先生に診てもらうメリット~】
消化器が強い病院が近くにあれば、ぜひそうして頂いた方がよろしいかと思います。
僕が思う診療科の中で強みを推している病院の方がいい理由としては2つあります。
『得意な先生に診てもらうメリット①』
得意診療科、例えば消化器であった場合
その先生あるいは病院には消化器の症例数が集まりやすく、多面的な診断アプローチをして頂ける可能性があります。
獣医の優秀さは『症状から頭に浮かぶ病気の多さ』で決まります。
症例数が多いということはそれだけ経験値が多く、診断アプローチの精度が高いということです。
『得意な先生に診てもらうメリット②』
『得意診療科目を消化器と公表している先生=消化器疾患に対し、獣医師のプライドを賭けている先生』であるということです。
得意な診療科を書いている先生はそれだけ勉強してきたというプライドがあります。
たとえ、今回のケースがIBDでなかったとしても、決して諦めずに原因追求に努めてくれるかと思います。
病院選びは難しいですが、きちんと説明してくれて、納得いく治療をしてもられる病院を選ぶのがポイントです。
病院選びについて悩まれている方はこちらもご参考にして頂ければと思います。
【病気の徹底解説は『オタ福の語り部屋』まで】
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