オタ福の相談部屋

あなたの主治医はどう言いましたか?

エコーで膀胱三角に影が…考えるべき疾患は?

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【はじめに】

今回は『エコーで膀胱に影がある』と言われた方からのご質問です。膀胱に影がある場合、どのような疾患が考えられるのでしょうか?

【目次】

 

【ご質問内容】

11歳マルチーズ避妊メスです。
動物病院にて膀胱に腫瘤を発見されました。
尿を持参しましたが、潜血もなく、悪く見えるような細胞もありません。正常の尿で本人もまったく普通です。
エコー検査では膀胱三角にモワッとした影があります。サイズは5mm少しです。
Braf検査は陰性でした。
膀胱三角にある腫瘤は癌の可能性が高いですか?
尿検査でも異常所見がなく、本人も無症状です。
こんな場合はポリープや過形成やって可能性もあるのでしょうか? 膀胱炎の所見もありません。
追伸、数日後に検診では影が消えていました。

【回答】

『膀胱にある影で考えるべきこと』

膀胱にエコーで影が見えた時に考えるべきことは『腫瘍性疾患』なのか『"非"腫瘍性疾患』なのかということです。
それを知るためには多面的なアプローチで診断していきます。

膀胱腫瘍を診断するためには
・身体検査
・血液検査
・尿検査
・画像検査(エコー、レントゲン、CTなど)
・カテーテル採尿による細胞診
・膀胱鏡による組織生検
・Braf検査(←遺伝子検査)
などがあります。

これらを駆使して、診断を行います。
最も診断精度が高い?と言いますか、確定診断として使用されるのは『組織生検による病理検査』です。影を作っている物体を採取し、顕微鏡を用いて細胞の形や組織構造の異型性(正常組織との乖離度)を評価します。

『腫瘍? 非腫瘍? 影を作る疾患とは』

次に膀胱にエコーで影を作る疾患を挙げていきたいと思います。

膀胱に影(腫瘤)を作る疾患

【腫瘍性の疾患】
・移行上皮癌(←最も一般的な膀胱癌です)
・移行上皮癌以外の癌

【腫瘍性ではない疾患】
・慢性膀胱炎
・ポリープ様膀胱炎
・線維上皮性ポリープ
・肉芽腫性膀胱炎/尿道炎
・ガーゼオーマ(←医療ミスでガーゼが体内に残った時に発生します)
・炎症性偽腫瘍(←免疫が関連しているもの)

先ほどもお話ししましたが、膀胱に腫瘤を見つけた際、これらの疾患を考慮し、『腫瘍』なのか『腫瘍ではないのか』を診断していきます。

この鑑別が重要な理由
腫瘍かそうでないかを鑑別することが重要な理由としては『治療方針が大きく異なるから』です。腫瘍であれば、外科的な切除+抗がん剤治療などが必要になってきます。
他にも、膀胱炎であれば抗菌薬を使用しますし、免疫が関連するポリープなどでは免疫抑制剤が必要になります。
膀胱炎で細菌感染をしているところに免疫関連性のポリープだと誤診し、免疫抑制剤を使用すれば病態が悪化することは自明です。きちんと検査を行い、診断することがとても重要になってきます。

『Braf検査について』

Braf検査とは犬の膀胱移行上皮癌や前立腺癌で見られる遺伝子の変異を検出する検査で、膀胱腫瘍の補助診断として使用されることがあります。炎症性のポリープなどではこの遺伝子変異が認められないため、腫瘍性疾患か非腫瘍性疾患を判断する一つの手がかりとなります。

もう少し詳しい話
Braf検査とは『canine BRAF V595E遺伝子』の突然変異を検出しています。
ノースカロライナ大学が2015年に発表した論文によると、
・膀胱移行上皮癌の症例では75%(48匹中36匹)が陽性
・前立腺癌の症例では85%(27匹中23匹)が陽性
・非腫瘍性疾患の症例では0%(38匹中0匹)が陽性
と報告されています。

ddPCR had superior sensitivity for detection of the V595E mutation: 75% of UC, 85% of PC, and 0% of control samples were mutation positive, respectively, and the V595E mutation was detected at a level as low as just 1 in 10,000 alleles (~0.01%). 引用文献:Detection of BRAF Mutation in Urine DNA as a Molecular Diagnostic for Canine Urothelial and Prostatic Carcinoma

 

『本症例を鑑みる』

本症例では
・犬自身は排尿困難・排尿疼痛などなく、気にする様子なし
・尿検査にて潜血・異型な細胞なし
・Braf検査陰性
・エコーにて影が見えたが、数日後の再診では消えた
悪性腫瘍を示唆するような所見が見つかりません。特に悪性腫瘍の場合、無治療で腫瘍が消失する可能性は低いと思います。
なので、僕は『現時点で腫瘍であるとは言えない』と考えています。とはいえ、膀胱に腫瘍をないと断言できる訳でもありません。
「どうしても鑑別したい」という場合は大学病院などの二次診療施設で膀胱鏡を用いた組織生検を行うことをお勧めします。
 

【最後に】

エコー所見だけで、腫瘍か非腫瘍かを判断することは困難です。その例として教科書に載っている画像を載せておきます。このようにエコーの見た目だけで判断することは非常に困難です。疾患は複数の検査を用いて、診断していく必要があります。

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【写真出典】Stephen J. Withrow ; David M. Vail ; Rodney L. Page : Withrow&MacEwen’s SMALL ANIMAL Clinical Oncology. 5th ed.,  ELSEVIER, 2013, 575p Figure29-3, A,C

【本記事の参考書籍】

Stephen J. Withrow ; David M. Vail ; Rodney L. Page : Withrow&MacEwen’s SMALL ANIMAL Clinical Oncology. 5th ed.,  ELSEVIER, 2013, 572-578p

 

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