オタ福の相談部屋

あなたの主治医はどう言いましたか?

キャバリアでチックが見られます。何が考えられますか?

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【はじめに】

今回は『キャバリアでチックが見られます。何が考えられますか?』というご質問です。本症例はMRI検査にて異常が見られず、抗てんかん薬も効かないキャバリアを飼育の飼い主さんより頂いたご質問です。今回のご質問内容は非常に難しく、僕自身満足のいく回答ができませんでした。今回の記事はどちらかというと、「この病気ではないか?」といった『考察』に近い記事になっています。

【目次】

 

【ご質問内容】

『臨床経過と診断』

10歳10ヶ月のキャバリア去勢雄を飼っています。
2018年10月頃からヒトで言う、チックの様な症状がでます。気候や時間に関係なくビクビクします。
ビクビクしながらよろめく事もあり、最近は少し酷くなってきました(よろめくだけで倒れたりはしません)。

動物病院では癲癇(てんかん)を疑われ、MRIを撮りましたが脳は綺麗とのことで
原因は掴めておりません。試しに癲癇(てんかん)のお薬を服用しましたが、それといって大きな変化はありませんでした。

他の気になる症状としてはやたら欠伸をする、
体に熱が篭もりやすいのか、すぐに暑そうにハァハァする(体温は平熱)などがあります。


『質問内容』

今は特に何も治療をしておらず様子見なのですが、少しずつ悪化しており、この先どうしたらよいか悩んでおります。オタ福さんはどう考えますか?

【回答の前に】

『オタ福がまず返した回答』

このご質問を頂いた時、僕はまず
・癲癇(てんかん )の可能性が無いこと
・原因が心臓にあるのではないか?
と考え、以下のような返答をしました。

癲癇(てんかん)には大きく分けて二種類あります。

一つ目がMRIで脳に変化が見られないもので『真性てんかん』と呼びます。
もう一つがMRIで腫瘍や炎症などの異変が認められるもので『症候性てんかん』と呼びます。
一般的に真性てんかんは1~5歳と比較的若齢で発症するのに対し、症候性てんかんは2/3以上の症例が5歳以上での発症となります。

今回、年齢が11歳弱ということなので、考えられる原因として症候性てんかんの可能性がありますが、MRIで異変が認められないということは原因が脳以外にある可能性が考えられます。
MRIの異変がないということなので、真性てんかんの可能性も除外しきれないところはありますが、抗痙攣薬が効かないということなので、やはりてんかんの可能性は低いのではないでしょうか?

続いて、キャバリアは遺伝的に心臓が悪い子が多いので、症状の原因に心疾患(僧帽弁閉鎖不全症)があるのではと返答しました。

ところで、心臓の調子はいかがでしょうか?
キャバリアは僧帽弁閉鎖不全症などの心臓病を患いやすい犬種(4歳以上で約5割が心雑音を認める)です。

僧帽弁閉鎖不全症とは心臓の左心室から左心房への逆流を防ぐために必要な僧帽弁と呼ばれる弁がきちんと閉じなくなっている状態です。
こういった状態が持続すると、肺に水が溜まってしまい『肺水腫』と呼ばれる病態が現れます。

肺がうまく機能しなくなると『酸欠状態』に陥り、意識が飛んだり(←格闘家が首を絞められたのと同じ状態)、呼吸困難として「ハァハァ」と息が荒くなります。

加えて、脳が酸素不足になると、欠伸(あくび)もします。欠伸(あくび)は脳が酸素不足になった際に無意識に行う動作として知られています。
また、体には『代償性機構』といって、このように酸欠状態になると、血圧をあげたり、心拍数を上げたりして、体循環を維持しようと働きます。この代償性機構は心臓により大きな負担をかけることになるので、症状が進行していきます。症状が徐々に進行しているということなので、こういったことも関連しているのかなと考えました。

というわけで、僕は心臓病の可能性もあるかと考えます。

もし、まだ心臓の検査をされていないのであれば、心臓のエコー検査やレントゲン検査を担当医の獣医師にお願いしてみてはいかがでしょうか?

 

『その他の鑑別疾患も挙げてみた』

最初に
発作の鑑別疾患はたくさんありますが、今回はMRI検査まで行っていることから『低血糖』や『肝性脳症』など血液検査でわかるような疾患は挙げていません。

「鑑別疾患①:焦点性発作」

他に意識を維持したまま、運動機能が阻害される疾患では『焦点性発作』というものがあります。

一般的に発作や痙攣と言われると『手足をバタつかせる発作』というイメージが強いかと思います。これは『全般発作』と言って脳全体が興奮する発作によって起こっています。

一方で、『焦点性発作』とは脳の一部が興奮する発作で、その興奮した部位とその部位で脳が担っている役割に一致した病変が現れます。
例えば、手を持ち上げるような動作を担っている部位が興奮すると、ヒクヒクと手が持ち上がってしまい、当の本人も困惑した状態が見て取れます。

「鑑別疾患②:内耳炎からの前庭疾患」

キャバリアは垂れ耳なので、耳の中が蒸れやすく外耳炎が起こりやすい犬種です。外耳炎が慢性化し、炎症が内耳にまで進行すると内耳炎を引き起こすことがあります。内耳には蝸牛や半規管など、バランスを維持するのに重要な器官があります。炎症がそこまで進行するとバランスを崩し、嘔吐したり、立てなくなることがあります。

 

『しかし、オタ福の予想は違ってた』

原因は心疾患では無さそう…
上述した内容を回答させてもらったのですが、ご質問頂いた飼い主さんはキャバリアの心疾患について要注意していらっしゃり、毎度心臓の検査はしてもらっていたようです。


内耳炎もない…
内耳炎の可能性もないと思います。なぜなら内耳炎であれば、チックのような症状が出る前にもっと耳を痒がるし、異臭もします。

これは難しいな」と思った
症状が現れている動画を添付して頂いたので、そちらを参考にいろいろ調べてみました。

【回答】

『発作性転倒の可能性』

少々お時間を頂き、調べていくうちにキャバリアには『発作性転倒(英名:Episodic falling syndrome)』という遺伝性疾患があることが分かりました。

『発作性転倒について』

発症時期
14週齢から4歳齢
今回のケースとは一致しません。

症状が現れる時
運動、ストレス、不安、興奮などのタイミングで症状が現れます。
本症例ではどうでしょうか?

症状
頻度や重症度は様々ですが、四肢における進行性の筋肉の高緊張が見られ、”祈りのポーズ”を取ったまま動かなくなります。
意識の喪失やチアノーゼ(舌が青紫色になる症状)は見られませんが、四肢が緊張し、転倒してしまうことがあるようです。

その他の症状としては誤訳が無いように、英語名も記載しておきます。
・facial muscle stiffness=顔が強張る
・stumbling=よろける
・bunny-hopping gait=日本的に言うと片足立ちの『ケンケン』のイメージ
・Vocalization=鳴く(”声が出る”と言うニュアンスの方が近いかも)
しかし、こういった発作が起こっている間は犬の意識が正常に保たれていることが特徴なようです。

症状は本症例と類似している点がいくつかあります。 

Episodes are of variable frequency and severity but are characterized by progressive hypertonicity involving thoracic and pelvic limbs until the dogs are ultimately immobilized in a characteristic 'deer-stalking' or 'praying' position. Stiffening of all four limbs during exercise can cause falling, although there is no loss of consciousness or cyanosis. Other clinical signs may include facial muscle stiffness, stumbling, a 'bunny-hopping' gait, arching of the back or vocalization.引用文献:A canine BCAN microdeletion associated with episodic falling syndrome

 

診断方法
発作性転倒は骨格筋の微細構造の欠陥が関連していると言われているので、筋肉生検を行うと筋小胞体の拡張と増殖、ミトコンドリアの膨張と変性が確認されると記載されていました。ただし、上記文献の引用文献に反例を示す論文もあるので、成否は不明でした。

あとは遺伝子検査でDNAを調べることあるようですが、何だか実験的で臨床では行うことは無いような気がします。

大学病院とかでこの病気を研究している先生がいらっしゃれば、診断してくれるかもしれませんが、実際の病院でこういった検査はしてもらえないと思います。

治療法
ベンゾジアゼピン系抗痙攣薬が効果的"らしい"です。"〜らしい"としたのは、論文の一例であり、きちんとした書籍で読んだわけではないので、これ以上の言及を僕からは言えないためです。
ただ、発作性転倒は抗てんかん薬への反応が悪いことも特徴なので、本症例と一致していると思います。

【最後に】

ご質問を頂いた飼い主さんには、質問内容に合うクリティカルな回答ができませんでした。
・中高齢(11歳弱)で発症
・MRIで正常所見

・チック様の症状と一時的なふらつき
・抗てんかん薬が効かない
・進行性の疾患
これらの特徴と読んだ論文から僕は『発作性転倒(Epidsodic falling syndrome)』を疑います。

本症例で考えられる疾患について、何か心当たりのある獣医の先生方や同じ様な症状を示すキャバリアを飼育されている飼い主さんは是非コメントあるいはLINEを頂ければ幸いです。よろしくお願いします。

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